多次元の神様のこと

九州芸術工科大学(現在は九州大学芸術工学部)多次元デザイン実験棟の裏手には神社が建っていて、ここが近所でも有名な心霊スポットだったのです。なんか浅野といいここといい、我々が芝居するところ必ず心霊がいる感じでちょっとアレなんですが。

その神社に生えてる木が何しろヤバイらしく、やれ大学を建てる時に誰かが切り倒そうとしたら祟りがあってどうこう、とかそういう逸話がまことしやかにささやかれていたのです。

で、こう…どこにでもいるでしょう、「僕、霊が見えるんです」とかいう人が。そういう人らが「あそこにだけは近寄りたくないです」なんて言ってガクガク震えて逃げていくような、そんな怖い所だったのです。多次元ホールは。

芝居の本番中にも、某G先輩辺りが「いま、そこにソバージュの女がおったろうが?いや、おったとよ。おったよね?」とか言って共演者を恐慌に陥れちゃうような、そんな所なのです。

てな訳で僕らはそんな多次元に巣くう霊の皆さんを「多次元の神様」と呼び、仕込みの前にはかならず御神酒をささげて公演中の無病息災、商売繁盛、豊穣豊作をお祈りしたのです。この御神酒を捧げる風習はいまだにアポロに残っていて、我々は劇場に入る際、「剣菱」一升瓶を必ずお供えして公演にのぞんでいるのです。

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